[政治・経済] 正論による格差の拡大

9日は、Interop というイベントに参加してきました。

そこでは最新のネットワーク機器やセキュリティ関連の製品などが紹介されていました。

印象的だったことは、日本版 SOX 法に対応するために、法的な正しさを証明するために業務プロセス(つまりメールの履歴等)を保管したりするようなソリューションを提示する製品が多く紹介されていたことです。

私は、これが既存の製品をマーケティング的な理由で SOX 対応ということで、パッケージングしなおしただけであればいいと願います。そして、そのような設備投資を行うことが常識的になることに怖れを抱きます。

非常に単純な話ですが、SOX 対応にはコストがかかります。そして、SOX対応を行うお客さまにとってはそれは関係ない話です。関係 があるのは、その企業に投資している投資家です。

日本版SOX 法がもたらすのは、どういう社会でしょうか?

起業家は、株式を公開し、そしてSOX に対応するコストと公開することによるメリットを比較して、株式を公開するかどうかを決定します。
才能があり、前途洋々の才能ある起業家は非公開のままでも充分資金を集めることが可能です。一方、有望なビジネスの buzzword はちりばめられているものの才能に欠ける起業家は、プロフェッショナルであるベンチャーキャピタリストには見抜かれてしまうため、一般公募することで資金を集める動機が強くなります。

たとえ、すでに公開企業であったとしても業績がよく、簡単に資金調達が可能な企業であり、市場による資金調達が必要でない場合は、非公開化を目指すということはありえます。たとえば最近すかいらーく社は、Management By Out によって、非上場企業になりました。

この状況では一般投資家は区別されます。つまり、公開された市場でアクセス可能な企業は、非公開では資金を集められない企業のみになります。公開企業は利益に貢献しない SOX 法対応を行いつつ、面倒な SOX 法対応が不必要な非公開企業との競争に勝たないといけないわけです。

この状況は、結果的に一般の零細投資家と資金量があり非公開な株式市場にアクセス可能な投資家との間との格差を拡大します。
それがイグノーベル賞を受賞したほどの経済学者*1であるエンロンアーサーアンダーセンの会計士からの悪影響から一般投資家を守るために、必要とされた SOX 法によりもたらされた結果です。

私は社会全体をどうこう言う立場にいるわけではありません。ただ、正論が実現することによって導かれてしまう未来がどのような未来なのかについての想像力が欠如していると感じてしまいます。