[政治・経済] 9年前のあの日を思い出す。

人生には決して忘れることができない日というのがある。

私にとってそういう日の中の一つは、1998年10月7日だ。

1998年10月7日から10月8日にかけて、ドル円の為替レートが激しく動いた。
わずか 2 日間で 20円動いたのだ。

当時は日本は金融危機の真っ只中。銀行の名前は次々と変わっていく。アジア通貨やロシアなどの危機の余韻もまだあった頃だ。たしかに円のキャリートレードなどが当時盛んで円安水準ではあった。

しかし、だ。

わずか 2 日間で 20 円も。当時はユーロはまだ産声をあげる前だった。円ドルが世界で最も取引額が大きくその分安定しているというのは常識だった。

当時は直近で少しずつ円高に向かいつつあり、多くの関係者が円売りのポジションを持っており、全員が一斉にてじまえば円が大きく上昇するというのは理屈では分かる。

それでも、1998年10月7日に起こった出来事は現実にそこで起こっている出来事ではなく、遠くの世界で起きているかのような感覚であった。

こんな文章を唐突に書いているのは理由がある。
昨日から今日にかけての相場の展開は激しかったのだ。

とは言っても、円ドルが動いたわけではない。円ドルはこの文章を書いている時点で、最高値と最安値の差が5円程度であり、まだマイルドだ。

オセアニア通貨が動いた。豪ドルとニュージーランドドル

豪ドルは一日の振れ幅としては 8 円ほど動いた。かなりの衝撃だ。

それでも絶対値でいっても比率でいっても当時ほど激しく動いたわけではないのだが。

最近とても違和感があったことがあった。それは最近 FX がとても流行っているようだが、その人たちが過去のチャートについてあまり知らないことだ。おそらくその理由は証券口座を開いて取引してもらうには不都合なので、だれもそれについて解説しないからだろう。

なお、1998年の10月以降の相場について書くと、20円の円高の後は一時的にはもう一度円安に振れたものの、さらなる円高が進んでいった。当時の円キャリートレードを試みていた人は次々と手閉まっていきながら円高が継続していき、最終的には1999年4月に101円をつけて、それから反転していく。
http://www.ginkou.info/modules/chart_fx2/

その後は、日本の円高のおかげで危機的な状況にあったアジア経済が回復していく。一方アメリカでは NASDAQ が活況を呈し、経済に新しいルールが生まれる。そして IT バブル経済へと進んでいくのだ。

今からの経済の動向について私は何か予想できるような立場にはないが、一つ予想するための手助けとなる点について書こう。

アメリカが風邪を引けば、中国・アジアが重態になるかどうかが判断の分かれ目になる。

アメリカ経済はおそらくこれからは政治的に正しい表現をすればゆるやかな成長、現実を直視すれば停滞または景気後退期に入るだろう。

現在のグローバル経済ではアメリカが最後の買い手であり、アメリカが消費することによって世界経済が支えられてきた。
そのアメリカが消費できない時代になったときに、中国やアジアにおいて、中産階級が力強くなり、代わりに消費できるかどうかが問題だ。アメリカが少し減速したときにアジア経済は急ブレーキ・急降下する場合は社会不安の増大・地政学的リスクの増大というシナリオも現実味を帯びる。

しかし、今日はとてもいいニュースがある。
アジアが代わりに消費していくだろうという明るい展望を描けるニュースだ。

昨日から今日にかけて、大幅な円高が進行したのだ。円安でひいひい言っていたアジアの輸出産業などもこれで息を吹き返すことができるかもしれない。