グローバルキャリートレードの巻き戻し

昨今、円安が進んでいるようです。5月くらいに起きた世界株式の同時暴落もその後、大きな経済的破綻を招くことなく順調に復活を遂げているようです。

この blog を読んでいる方はみんな理解していると思うので、ただの復習ですが、5月に起きた世界株式の同時暴落は3月に決断された日本銀行短期金利引き上げから始まって発生しました。

正直に言って3月のその時点では福井総裁のスキャンダルが同時に起こっていたとはいえ、短期金利引き上げはそれほど市場の意外感があった事件ではありませんでした。時期に多少のずれがあっても充分想定内で市場は予期していたと多くの人は思っていました。

しかしながら、その後におきた反応の連鎖は強烈でした。アイスランドニュージーランドの通貨の暴落、そしてインドなどの新興国市場のみならずアメリカや日本といった世界株式の同時暴落、さらには商品市場にまで波及しました。

しかし、その後の数ヶ月の動きを見ると、市場は思いのほか強靭であったようです。その同時暴落した株価は現時点ではほとんどの国で戻しています。

それでも石油は一時期ほどの価格を維持しているわけではありませんし、銅も数々の事件のものの上値の重さを意識させる価格展開になっています。

その中で私が気になる値動きがあります。それは長期日本国債金利低下です。今はすでに5月頃の市場の混乱期を脱し、緊急避難的な信用への逃避はなくなっても良い時期のように思います。日本の金利がこれから急激に上昇するという予想はすでに鳴りを潜め、市場のコンセンサスは現在の金利を比較的長期間維持するという形に移ってきたのかもしれません。

驚くべきことですが、統計数字を見る限り、今でも日本のデフレは終わっていません。消費者物価指数のコア指標を見る限りいまだに物価の下落は継続しているようです。国内企業物価指数は明確に上昇し始めていますから、流通業界などの企業努力でこの消費者物価指数の下落は実現されていると言ってよいでしょう。そして、デフレが継続している現在、次の金利上昇は遠いという市場の判断があったのでしょうか。

この長期金利の低下などがあって、冒頭に書いた円安へとつながっています。日本で借り入れを行って、日本国外に投資を行うというトレード手法があります。日本で0%でお金を仕入れてアメリカで5%で運用すれば、単純に5%を儲けることができます。このように金利をうまく活用して利ざやを稼ぐことをキャリートレードといいます。そして、この数年間はグローバルキャリートレードと言われる世界全体を舞台にしたキャリートレードが極めて強く活用されていました。

アイスランドニュージーランドの通貨暴落のときは、一部ではグローバルキャリートレードは終焉したという声さえ聞かれました。しかしながら、まだその火は消えてはいなかったようです。

一時期逆回転していたお金の流れがまた、元の方向へと進み始めています。