厚生労働白書発表

平成18年版厚生労働白書が発表された。いつも思うが、日本の官僚というのはただ分析するだけで良いのであれば、とても良い仕事をする。一流と言ってよい。

ただ、その分析結果を理解し、政策につなげていく力量がある政治家がいないことが課題だろう。

というわけで、最近は忙しい中、厚生労働白書を読んでいた。とても面白い。無料で読めるので、是非多くの人に読んで欲しい。

マスコミに掲載されている数字として最も有名なものは、平均初婚年齢であろう。今年の場合は、夫が29.8才で、妻が28.0才であった。

私にとって、意外だったのは、1966年と2004年の年齢階級別の年間平均所得金額を分析した部分である。
1966年では、29歳以下の世帯は22.8万円、30-39才の世帯は19.3万円、70歳以上の世帯は17.6万円となっており、基本的に年齢が若ければ若いほど所得が多い結果になっている。

理由を私なりに推測するとこれは、当時の労働集約型の産業構造では若い方がより多くの仕事を行うことができるという点で有利であったことらの自然な帰結なのだろう。ある種の実力主義的な給与体系から、若い方が多くの所得が得られたということだ。
少なくとも、いわゆる年功序列賃金が日本の伝統ではないことが示されているだけでも、覚えておくに値する資料だ。

2004年では、この傾向が完全に逆転し、70才以上の平均が179.6 万円、30-39才の世帯では177.7万円、29才以下の世帯では158.8万円となるつまり、年老いたものほどより、所得の多い世帯となる。

同一年齢階級世帯内の所得分布も私にとって衝撃的な内容だった。

2004年の世帯主の年齢階級別の世帯数でいうと、29歳以下の世帯では、所得金額が100万円未満の世帯が30.5%を占めるのに対して、世帯主が60-69才の世帯では19.2%だった。また所得金額が1000万円以上の世帯は29歳以下では調査対象中に皆無であったが、60-69才の世帯では0.8% ながらら存在しているということだ。
所得100万円で世帯主というのはかなりギリギリの生活だろう。収入が100万円以下なわけではないとはいえ、どうやって暮らしているのか不思議に思う。

他に特に印象に残った点として、期待と理想がとりあげられている箇所がある。

そのまま引用する。

(1) 少子化については、大多数の者が少子化の進展(82.6%)を将来の予想としているのに対して、大多数の者が少子化に歯止めがかかる(89.4%)ことを将来の理想としており、理想と現実にギャップが見られる。
(2) 家庭と地域については、多くの者が家族で支え合わない社会を予想する一方(65.5%)、家族で支え合う社会を理想としている(55.6%)。また、大多数の者が近所付き合いの希薄になる社会を予想する一方(85.7%)、近所付き合いの盛んになる社会を理想としている(84.5%)。家族の支え合い(55.6%)に対する期待と、近所付き合い(84.5%)に対する期待のいずれも高いことが特徴である。
(3) NPO・ボランティア活動、市民と行政の協働については、多くの者が、NPO・ボランティア活動(71.3%)や市民と行政の協働(71.8%)が盛んになる社会を予想し、さらに、NPO・ボランティア活動(93.3%)や市民と行政の協働(93.6%)が盛んになる社会を理想としており、NPO・ボランティア活動や市民と行政の協働に対する期待が大きくなっている。
(4) 高齢期における社会参加については、70歳時の理想の生活として、「仕事中心の生活」に加えて、「ボランティアや地域活動への参加」や、「適度に仕事と社会参加」を加えると、いずれの世代でも60%を超えており、何らかの形で社会へ参加しようとする意欲は極めて高い。これらの点については、今後の社会保障を考える上で我々の進むべき方向性について示唆を与えるものと考えられる。