[政治・経済] 政策作りとはムード作り

5月12日号の日経ビジネスの特集が「ムードで決まる政策が経済を殺す」というものであった。

このテーマは最近ずっと深く考えていたものであったので、非常に興味深かった。

このところの、改正建築基準法の問題や消費者庁などの問題では、どちら向きのムードになっているかが重要で、その中の細かい点は無視されている。

後期高齢者医療の問題で政府の説明不足が現在強く指摘されているが、説明不足というような指摘は少しずれた認識である。正確にはムード作り不足であり、根回し不足である。

もうひとつ直近の例として、ネット規制の問題がある。学校裏サイトの調査結果を発表し、保護者の危機感を煽れるだけ煽って、ネット規制を実施可能にしている。

この進め方は上手だ。私自身はネット規制に反対だが、感心した。

現代日本社会では、ルールとはすなわちムードであり、ムード作りがルール作りだ。ムードを醸成させるために調査結果を周知させ、専門家や文化人からの多くのムードを醸成させるためのコメントを引き出すことが、これからの日本社会の制度設計の重要なステップとなる。

さて、では後期高齢者医療のときはなぜそのムード作りの努力が怠ってしまったのだろうか。
それは、単にそのことに気がつかなかったというよりも、国民が知らないままに進めることが、制度成立のために必要であると判断していたからのように私には思える。

それは後期高齢者医療のためのムード作りという過程がいやおうなく、過去の年金政策の失敗をあぶりだすからだろう。この点については回を改めてまた、深く考察したい。