日経ビジネス 立ち枯れ家計

日経ビジネスの今週の特集が、「立ち枯れ家計」だった。

「立ち枯れ」というフレーズが妙に納得感がある。プライム層(=上流)がさまざまな理由で、経済的に苦境に陥っているということだ。プライム層の痛みを特集しているという切り口でいえば、取り上げる意味がある。サブプライム問題はすでに終わっておりこれからはプライム問題になるからだ。

これからの世界経済は景気の悪化が本格化していくだろう。race to the bottom が本格化し、流行語になるかもしれない。

「race to the bottom」は、「底辺への競争」 とよく訳される。

労働条件の引き下げへと向かう過酷なレースだ。「労働条件」とは「給与面」だけではなく、「雇用の安定さ」「職場の雰囲気」、「勤務時間」さらには「強制労働や児童労働の有無」といった内容を含む。

「race to the bottom」はグローバル経済と資本主義、利益至上主義がもたらす帰結だ。

不均等で不適切な結果であるが、それが今の枠組みだ。みなより安い製品を求める。そのためには労働条件は犠牲にしなくてはいけない。それに職を求めている人は条件は関係なく今日の雇用を得ることが優先されてしまうのだ。それが今日の生活を守るということで、責任を果たすということだ。責任とはどこかなにか意味がよく分からないが、それはきっと世間からのプレッシャーがあるということを意味するのだろう。

今のプライム層は確実に少しずつ切り崩されていく。あっけなく、プライム層から底辺・下流へと移っていくことになるだろう。そのきっかけは失業・離婚・親の介護・息子や娘の就職難・病気・投資の失敗。落とし穴がたくさん口を開けて待っている。そして、世間はそれは自己責任と大合唱する。

そういえば、リーマンが破綻した。

リーマンの日本法人で働いていた高額所得者の中には東京のマンションを一棟買いで取得していたものもいたと聞く。

高額の所得を得られていた職も失い、マンション不況が直撃し、価値は下落し、空き室のあるマンションとローンだけが残されたケースもあるだろう。アメリカと違い、日本ではノンリコースローンは主流ではない。自分で責任を持って、返済しなければいけない。彼らのこれからの人生はどうなるのかが分からないが、全員が生き延びられるわけではないだろう。世界は非情なのだ。それは自己責任なんだから彼らは受け入れなければならない。

私たちはみんな世間の一部であり、そういうプレッシャーを受けながら与えながら生きているんだから。